今回は、多くの投資家が気づかないうちに陥っているかもしれない、値段に縛られる心理的な罠についてお話ししたいと思います。

物語:思い出の株に縛られたマサト
マサトは、3年前にA社の株を1株1,000円で購入しました。当時は会社の将来性を強く信じており、その株は彼のポートフォリオの中でも特別な存在でした。
しかし、その後A社の業績は悪化し、株価は700円まで下落してしまいました。
「この株を今、売るのは損だ。だって、1,000円で買ったんだから…」
マサトはそう考え、株を売りませんでした。彼にとって、A社の株の価値は1,000円という購入価格に固定されていました。現在の企業の価値や将来性とは関係なく、ただ過去の価格を基準に判断を下していたのです。
株価が600円、そして500円と下がり続けても、マサトは「もう少し待てば、いつか1,000円に戻るはずだ」という希望を捨てきれませんでした。
このマサトの行動は、「アンカリング効果」という心理的なワナに囚われてしまった状態です。
アンカリング効果:最初に得た情報が判断を歪める
アンカリング効果とは、最初に得た情報(アンカー)に、その後の判断が引きずられてしまう心理のことです。
マサトの場合、**「1,000円」**という購入価格がアンカーとなり、現在の市場価値を客観的に評価できなくなってしまいました。その結果、彼は損失を拡大させてしまったのです。
成功への思考法:リセットボタンを押してみよう
では、マサトはどうすればこのバイアスを乗り越えられたのでしょうか?
ある日、マサトは賢者のアドバイスを受け、投資の考え方を根本から見直しました。
「もし、このA社の株を今、初めて買おうと考えているとしたら、今の700円という価格で買うだろうか?」
この問いかけによって、マサトは過去の購入価格というアンカーから解放されました。彼は、現在のA社の業績や業界の状況を冷静に分析し、**「今の価値」**に基づいて投資判断を下せるようになったのです。
その結果、彼は損失が広がる前に株を売却し、その資金を成長の見込める別の銘柄に投資することができました。
あなたの「購入価格」をリセットする練習
もし、あなたが過去の購入価格に囚われていると感じるなら、一度立ち止まって、自分自身に問いかけてみてください。
「もし今、この株を初めて買うとしたら、今の価格で買うだろうか?」このシンプルな問いかけが、あなたの投資判断を過去の呪縛から解き放ち、より賢明な選択へと導いてくれるはずです。
