1. バークシャーハザウェイ社とS&P500リターンの比較
株式投資における集中投資の理論を論じる際、バークシャーハザウェイ社(Berkshire Hathaway)を取り上げることは非常に有意義です。同社はウォーレン・バフェットによって率いられ、長年にわたり株式投資の成功モデルとして広く認識されています。バークシャーハザウェイは、S&P500指数と比較して非常に高いパフォーマンスを見せてきました。
例えば、過去50年間で、バークシャーハザウェイの株価はS&P500指数を圧倒的に上回るリターンを提供してきました。この期間における年平均リターンは、バークシャーハザウェイが約20%、S&P500が約10%であり、10倍以上の差がついています。この差は、バフェットが選択した企業に集中投資する戦略が功を奏している結果です。バフェットは、持ち株の選定に非常に厳格であり、その事業の安定性や競争優位性、経営者の質を重視して投資を行っています。

集中投資が優れたパフォーマンスを生む理由は、優れた企業に資本を集中させることで、企業の成長と利益を最大化し、より高いリターンを享受できるからです。
仮に1965年時点で、バークシャー・ハサウェイ社とS&P500に1万円ずつ投資したとしましょう。S&P500に投資した場合、2023年時点で311万円になります。まったく悪くないリターンですが、バークシャー・ハサウェイ社に投資した場合は、2023年時点でなんと4億3800万円!になります。これが集中投資の効果であり、バフェットが投資の神様と呼ばれる理由です。

2. S&P500構成銘柄の中でもROICに差があること
S&P500指数の構成銘柄の中には、企業によってROIC(投資資本利益率)の差が非常に大きいことがあります。ROICは、企業がどれだけ効率的に資本を運用しているかを示す指標であり、企業の財務健全性や将来の収益性を評価するための重要な指標です。
例えば、S&P500の中にはROICが非常に高い企業(例えば、AppleやMicrosoft、Nvidiaなど)と、ROICが低い企業(例えば、低収益な小売業や重工業など)があります。ROICが高い企業は、資本を効率的に活用し、高い利益率を誇るため、長期的に株主に対するリターンを最大化する可能性が高いです。一方、ROICが低い企業は、資本の使い方が非効率的であり、将来のリターンが相対的に低くなる可能性があります。

集中投資戦略を採る場合、ROICの高い企業に投資を集中させることが、資本の効率的な運用に繋がります。ROICが高い企業に投資することで、成長性や収益性を最大化し、長期的なリターンの向上を狙うことが可能です。そのため、S&P500構成銘柄の中でも、ROICが高い銘柄に集中することは、リスク管理とリターンの最大化において重要なアプローチとなります。
3. 市場価格がFair Valueと大きく乖離することがある
株式市場には、バブルと恐慌という二つの極端な状況が存在します。これらは、S&P500の株価がその企業の「公正価値(Fair Value)」を大きく上回る場合(バブル)や、逆に下回る場合(恐慌)に発生します。
バブルは、投資家の過剰な期待や過剰な投資行動によって株価が実際の企業価値を超えて膨張する現象です。例えば、1999年のITバブルや2008年のサブプライムローン危機前後のバブルでは、S&P500指数は過度に高い評価を受け、実際の企業の業績や将来の成長性に見合わない株価がついていました。バブルが弾けると、株価は急激に下落し、投資家は大きな損失を被ることになります。
一方、恐慌は、経済危機や市場の過剰反応によって株価が企業の本来の価値を大きく下回る状況です。例えば、2008年の金融危機後や、2020年のCOVID-19パンデミック初期には、S&P500の価格が企業の本来の価値を下回り、株価は過小評価されることがありました。このような状況では、株価が低迷し、投資家は一時的な損失を被ることがありますが、長期的に見れば、過小評価された企業の株は回復し、リターンを得るチャンスを提供することもあります。
次の図は、米国のGDPと株式市場全体に近いWilshire 5000というインデックスの変動を比較したものです(2000年を100として比較)。一般的に株式市場全体の動きは、長期的に見るとGDPの動きと相関すると言われていますが(バフェット・インデックス)、Wilshire 5000の価格はGDPに対して、大きく下回ったり、あるいは上回ったりという形で、大きく変動していることがわかります。

集中投資においては、バブル時や恐慌時における市場の過剰反応を適切に評価し、企業の本質的な価値に基づいて投資判断を下すことが求められます。バブル時には株価の上昇に乗ることも一つの戦略ですが、その後の下落リスクに備える必要があります。一方、恐慌時には割安な株を見つけて投資することで、大きなリターンを得る可能性があります。
まとめ
集中投資戦略は、慎重な企業選定と市場の過剰反応に対する冷静な判断を前提にすることで、非常に効果的な投資手法となり得ます。バークシャーハザウェイのような優れた企業に集中投資することで、高いリターンを得ることが可能ですが、ROICの高い企業への投資や、市場の過剰反応を見極める能力が不可欠です。特に、S&P500構成銘柄におけるROICの差や、市場価格が公正価値を大きく超えるバブルや下回る恐慌といった現象を踏まえた投資判断が、集中投資戦略を成功に導く鍵となるでしょう。
注意点
この記事は、投資アドバイスを目的としたものではありません。株式投資は損失のリスクを伴います。投資判断は、ご自身の責任において行うようにしてください。