株式市場のリターンは予測できる?(米国編)

 2018年2月、10月と米国の株式は大きく下落しました。長期金利の上昇や中国との貿易摩擦などの理由と考えられますが、そもそもの要因として、米国の株式市場が、長期的な上昇により割高圏に突入していることが考えられます。

 今回は米国の株式市場が割高なのか、割安なのかを評価する手法を紹介します。またこの手法を使って、株式市場のリターンを予測してみます。

株式市場の評価方法

 株式市場が割高なのか、割安なのかを評価する指標の一つとして、バフェット・インデックスといわれているものがあります。これは投資の神様と呼ばれているウォーレン・バフェットが推奨している指標です。

 バフェット・インデックス = 株式市場の時価総額 ÷ GDP

この指標は、長期的に見ると株式市場の時価総額とGDP(国内総生産)は高い相関がある、という考え方から構成されています。株式の時価総額は、その企業が生み出す製品やサービスの価値の現在価値となります。またGDPは、国内で新しく生産された商品やサービスの付加価値の合計となります。したがって、個々の企業の時価総額の合計とGDPは同等の値となる、という考え方です。

 そこでまず過去20年間の米国のGDPと、株式市場全体の時価総額として、Wilshire 5000というニューヨーク株式市場やナスダックで取引されている米国に本社を置くすべての企業を対象としたインデックスを比較してみました。このグラフを見ると、GDPを中心にWilshire 5000の値が上下しているのが読み取れます。

米国GDPと株式市場時価総額の比較

バフェット・インデックス(Buffet Index)の計算結果

 次にこのWilshire 5000の時価総額をその時点でのGDPで割った結果(バフェット・インデックス)を示します。この値が100%近辺の場合、Wilshire 5000 ≒GDPであり、株式市場が適正な価格であると言えます。また100%を大幅に上回った場合は、株式市場が“割高”、大幅に下回った場合は“割安”、と判断します。

米国株式市場のバフェット・インデックス

 バフェット・インデックスが120%を上回った時期は、2000年前後のITバブルの時期、及び2016年〜2018年であり、2018年10月時点の株式市場は、過去20年の中で最も割高な時期となっています。またバフェット・インデックスが80%を下回った時期はITバブルの崩壊後の2002年前後と、リーマンショック時の2008年〜2009年となります。

 企業の業績が良く株式市場が好調な場合は、株価がオーバーシュートして割高となりやすく、逆に企業の業績が悪く株式市場が下落する場合は、安値方向に株価がオーバーシュートする様子が見て取れます。

株式市場のリターンの予測

 それでは次に、バフェット・インデックスと米国の代表的な500銘柄の指数であるS&P500のリターンとの関係を調査してみました。調査方法は、ある時点でS&P500を購入し10年後に売却した場合の年率平均リターンと、購入時点でのバフェット・インデックスの関係を調べました。

S&P500年率平均リターン(10年保有)とバフェット・インデックスの関係

バフェット・インデックスが高くなると(株式市場が割高になると)、年率平均リターンは低下し、逆にバフェット・インデックスが低くなると(株式市場が割安になると)、年率平均リターンは増加することが見て取れます。このグラフの回帰分析を行うと、以下のような結果となりました。

 年率平均リターン(10年間)= -0.18 x バフェット・インデックス+0.21

 相関係数:0.72

経済指標を扱う回帰分析としては、相関係数はかなり高く、年率平均リターンはバフェット・インデックスでかなり精度良く予測できることを示しています。(もちろんこの式は過去20年の結果から導いたものであり、将来を保証するものではありません)。ちなみに株価が適正な価格と判断できるバフェット・インデックスが100%の場合、上記式の年率平均リターンは0.03(3%)となり、GDPの平均成長率とほぼ同等となります。

 参考に5年後に売却した場合と1年後に売却した場合の年率平均リターンとバフェット・インデックスの関係も評価してみました。5年後売却の場合の相関係数は0.51と10年後売却ほどではありませんが、ある程度の相関はあります。一方で1年後売却の場合の相関係数は0.1であり、ほとんど相関はありません。このことは仮に現在が割高だったとしても、1年程度のタイムスパンでは引き続き割高のままである可能性は十分にある、ということを示しており、バフェット・インデックスでは短期のリターンの予測はできません。

S&P500年率平均リターン(5年保有)とバフェット・インデックスの関係

S&P500年率平均リターン(1年保有)とバフェット・インデックスの関係

 最後に2018/10月時点でのバフェット・インデックス138%を用いて今後10年の年率平均リターンを予測すると、-0.18 x 1.38 +0.21 = -0.038(-3.8%) となり、S&P500のインデックスを購入することは止めたほうが良さそうです。

 こういった環境下では、1) 債権や不動産等、他の金融資産で運用する、2) 個別の株式ごとに適正価格を評価し、割安な個別株を購入する、といった手法を検討することも良いと思います。

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