基礎からの集中投資(17)では、行動経済学で「失敗パターン」を回避する5つの思考法を紹介しました。今回は、その中の一つである「損をしたくない!」という心の葛藤について、ストーリー風にお伝えしたいと思います。

物語:塩漬け株の森から抜け出せ!
昔々、ケンジという名の青年がいました。彼は投資に興味を持ち、期待に胸を膨らませてA社の株を購入しました。最初は順調に株価が上がり、ケンジは得意げでした。
しかし、ある日を境にA社の株価は下落し始めます。
「大丈夫、きっとまた上がるさ」
そう自分に言い聞かせ、ケンジは株を持ち続けました。株価がどんどん下がっても、彼は「もうちょっとで買った値段に戻るはずだ…」と、株を売ることができません。
なぜなら、株を売って損失を確定させることが、耐えがたいほど苦痛に感じられたからです。
結局、A社の株は下落し続け、ケンジのポートフォリオの中で「塩漬け株」となり、身動きが取れなくなってしまいました。
このケンジの行動こそが、「損失回避性バイアス」という心理的なワナにハマってしまった状態です。
プロスペクト理論という名の羅針盤
この物語には、「プロスペクト理論」という行動経済学の教えが隠されています。これは、「人間は、利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛の方がはるかに大きく感じる」という心理を表すものです。
ケンジは、A社の株を売って損失を確定させる苦痛を恐れるあまり、もっと良い投資機会を逃し続けていました。つまり、彼は「機会損失」という、目に見えない損をしていたのです。
では、ケンジはどうすれば良かったのでしょうか?
成功への思考法:「もしも…」という問いかけ
ある日、賢者のアドバイスを受けたケンジは、こう考えるようになりました。
「もし今、このA社の株を売ったお金で、成長が期待できるB社の株を買ったとしたら、将来のリターンはもっと大きくなるんじゃないか?」
ケンジは、A社の株価が下がったことによる過去の損失ではなく、未来の可能性に目を向けることにしました。そして、感情に流されず、冷静に状況を分析し、A社の株を売却。その資金でB社の株を購入した結果、彼の資産は再び成長を始めました。

あなたの心の声に問いかける
投資において、私たちは皆、ケンジと同じように、「損をしたくない!」という心の声と戦っています。
もし、あなたのポートフォリオにも塩漬け株があるなら、ケンジのように**「このお金を今、他の銘柄に投資した方が、もっと良い結果になるだろうか?」**と、自分に問いかけてみてください。
損失を恐れずに、未来の可能性に目を向けることで、投資の道は大きく開けるはずです。